嘘つきな僕ら
『終わった~』
受験会場は俺と守が同じ教室、タケと加藤が同じ教室。
偶然にも俺の前に座って試験を受けていた守がそう叫び、俺も背伸びを一つした。
『お疲れ、守』
俺がそう言葉をかけると、守はくるっと振り返り、にやってした。
『良之、今回の試験問題ってさ』
『真人さんが考えた予想問題に似てたよな』
俺と守は笑った。
受験直前で真人さん(西山さんのお兄さん)が膨大な過去問から検討して編み出した予想問題に出てきた問題がいくつか数字やらが違うものの出題されていた。
『すごくね、真人さん』
『うん、俺、数学なんて特に自信ある』
俺の言葉に守もニコッと笑った。
『てか、全科目に自信持ってもらわないと困るよ?』
『…確かに…じゃなきゃ合格、できないもんな…』
俺が答えると守は困ったように笑った。
『それに早く由莉とお前がくっついてもらわないと俺も困るんだよ』
守の言葉に固まる。
…俺の気持ちを分かってくれてても。
でも人の気持ちがすぐ変わることなんてない、それは俺だってよく知ってる。
守だって例外じゃない…
きっと、まだ…
でも、きっと守のことだから、そうは言わないだけで…
『……ごめん』
俺が謝ると守は俺の頭を軽く叩く。
『バカ、由莉よりいい女、加藤より早く見つけて、あっという間に彼女作るんだよ、俺は』
そう言って、守は笑った。
それは守の本当の気持ちだと思う、きっと彼女への想いもあるんだろうけど。
『なぁ、良之?』
『うん?』
『今度、俺に好きな女ができたら、きっとお前に一番に報告すると思う。
そしたら、今度は俺の相談…乗ってくれよな…?』
今度は守に好きな女ができたら、一番喜ぶ。
今度守に好きな女との悩みや不安が生まれたら、俺が相談に乗る。
今度は守の恋を応援する、全力で。
そう、約束する。
『約束するよ』
俺はそう言って、守に笑った。
今度は、絶対に守ってみせる、守との約束。