嘘つきな僕ら
そして、俺たちは桜坂高校から、その足ですぐに彼女の家に向かった。
俺たちの受験合格の報告、それから俺と彼女が正式に付き合うようになったこと、それを真人さんとお母さんに報告するために。
『由莉ちゃん!それからみんなも合格おめでとう!!』
家の玄関を開けた瞬間、お母さんが満面の笑みでクラッカーで俺たちを歓迎してくれた。
一瞬の大きな音に驚いたものの、俺たちはすぐに笑顔になって、そして再び“おめでと”と言い合った。
そんな玄関の騒ぎに気付いた真人さんが玄関に現れた。
俺たちの賑やかな様子に受験合格と伝わったのだろう、真人さんも笑って出迎えてくれた。
『真人さん!!
俺たち全員桜坂高校に合格しました!!』
加藤がそう叫ぶと、真人さんの目に何か光るものが見えた。
『本当に、本当にありがとうございました!
真人さんが諦めずに馬鹿な俺たちに勉強を教えてくれたからだと思ってます。
本当にお世話になりました!!』
俺がそう言って、深々と頭を下げると、守、タケ、そして加藤も同じように感謝の言葉をいい、頭を下げた。
『全員、合格おめでとう。
お前ら誰も自分自身に負けることなく信じて勉強してきた。
その成果だと俺は思ってるよ、みんなお疲れ様』
真人さんはそう言って、優しく微笑んでくれた。
その微笑みは彼女の微笑みとそっくりで、俺はもう一度頭を下げた。
本当に彼女と出逢えたこともだけど、
真人さんに出会えて、本当に良かった。
『とりあえず、みんな中に入れよ?』
俺らは玄関のクラッカーからでたものを簡単に片付け、そして西山家のリビングに通された。
そこにはたくさんの豪華な料理、そして大きなケーキが用意されていた。
『すごい量だね、お母さん…ありがとう』
彼女がそう言うとお母さんは、
『一時はあなたが部屋から出てこなくて心配させられたけど…
またこうやって笑った顔が見れて良かったわ』
お母さんは優しく彼女の頭を撫でた。
『…ごめんなさい…。
でも、私、彼のおかげで元気になれたの』
彼女はそう言って、俺の手を取る。
『…え……まさか…』
真人さんが彼女のその行為に驚いた。
『…あの、俺、由莉さんと正式にお付き合いをしたいと思ってます』
俺の言葉に真人さんと彼女のお母さんが満面の笑みに変わった。
『お母さん、お兄ちゃん、彼が私の好きな人』
彼女は照れもせずに俺を紹介した。
『良かったな、良之』
真人さんは俺の肩に手を置いて、優しい笑みを見せながら、そう言った。
『…ありがとうございます』
俺はなんだか照れくさかったけど。
みんなのこの優しくて、温かい笑顔がすごく嬉しかった。
『良之くん、娘のことをよろしくお願いします』
お母さんは丁寧にそう言って、頭を俺に下げた。
『あ…俺の方こそ宜しくお願いします!!』
俺はお母さんより頭を深く下げた。
『良之、言っとくけど?
由莉を泣かせたら…』
真人さんが深く頭を下げる俺の耳元に声をかけてきた。
突然のことに俺は驚いて、顔を上げる。
真人さんはゆっくり顔をあげて、そして
『責任とって由莉と結婚しろよ?』
笑いながら俺にそう言った。
…け…結婚……って!!!
俺がどう返事していいか困っていると、
『バーカ!冗談だよ?
弟が欲しかったから、お前が弟になってくれて嬉しいってことだよ』
彼女にも負けるけど、真人さんにも負けるな…
でもそういう真人さんの性格が俺も好きだったりする。
『これからもよろしくお願いします、兄貴』
そう言うと、真人さんは本当に嬉しそうな顔を見せた。