嘘つきな僕ら
揺れる
それから俺たちは朝までメールを続けた。
今までどうして話さなかったのか疑問に思うくらい、お互いにメールを送り合う。
誕生日や血液型という一般的なプロフィール、好きな教科や好きなテレビの話、だいたいのことはお互いに知れたと思う。
今、彼女のことを質問されたら答えられるもののほうが多いんじゃないかってくらい。
でも、そこで気付く。
いくら俺のことを知ってもらっても、彼女のことを俺が知っても、俺には彼女とのメールをする上で重要な使命があること…。
少しずつ敬語もなくなってきた、今、その使命をそろそろ実行しなければいけない…
…そうだ、俺の使命は西山さんに守のいいところをアピールして、それで守の恋を成就できるよう導かなきゃいけない…
西山【中原くんはどんな女の子が好きですか?】
最後に彼女から送られてきたメールをもう一度見つめる。
どんな女の子…
それは多分…
【そういうの分からないんだよね。
でも自然に心に入ってきたひと?】
自然に俺の心に…
~♪~♪~♪~
西山【そういうの素敵ですね。
中原くんにそう想われる人は羨ましいですね】
今、言おう。
守に頼まれた通り。
【俺より守の方が一途に思ってくれるよ】
…どう返信した。
だって俺は守に頼まれてるから。
このために守からアドレスを教えてもらったから。
そう理由をつけて、自分の行動を正当化する。
彼女からの返信はない。
でも、それでいい。
彼女からの返信がなければ、これ以上彼女を知ることもない。
彼女からの返信がなければ、これ以上に彼女を知りたいと思わない、考えない。
そうしたら、今日守に会ったとき、返信なかったって言える。
だから、どうか彼女から返信がきませんように。
眠れないのに、俺はベッドに横たわる。
でも。
~♪~♪~♪~
彼女は俺の意図に反して、俺の元にメールを送ってきた。
西山【菅原くん、だよね?
菅原くんも誰か好きな女の子がいるんだね。
菅原くんの恋も上手くいくといいね】
彼女のメールに守の名字が三回出てきた。
一気に現実に戻される感覚だった。