クリスマスに泣かないように
◇◇◇



たぶん、気づかれてたんだとおもう。




『リーエーちゃん!』


『っ、』


会社の急騰室で、いきなり背後からやってきた時。

驚きでつい、背筋を凍らせてしまった。



『…リエちゃん?』


『あ、や、やあタカシ』


『やあリエちゃん。どうかした?』


『ううん、なんでもない。どしたの?』

『どうもしなーい』

『え?あっ』


後ろから、そうっと抱き締められる。

回された腕が、顎の前に来た。


トクンと胸が鳴ると同時に、しめつけられる。



――別れなきゃ、ダメなんだってば。



『は、離してっ』

『リエちゃん?』

反射的に手を離した。



『あのさ、タカシ。私たち――『今夜!』



遮るように、叫んだ。



『今夜、行くから』



それだけ言って、去っていった彼。



――たぶん、気づかれてたんだとおもう。


けれど、彼は“そういう雰囲気”になるたびに話をはぐらかせた。


まるで、聞きたくないというように。


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