クリスマスに泣かないように

「……」


一週間が経っても、私はあんまり大丈夫じゃない。


食い込んだ手のひらの爪の傷が癒えてきてるのに、私の心は荒んだままだ。


なんの偶然かは知らないけど、彼をあまり会社で見ないことが幸いか。



「クリスマスかあ…」


「サンタ(恋人)は今年もいないわ」


「ははっ、うまいこと言うねっ」



友人の冗談に笑える。


毎晩泣きすぎて腫れたりもしてない。


ご飯だって普通に喉を通る。


彼を会社で見かけても、「あ…」くらいにしか思わない。




だけど何かが違う一週間だった。




彼がいないのは当然として、何かが違う。


空虚感とでも表現すべきか。


何かが違うのだ。


ふ、と冷たい風が心に吹くというか。



あんまり大丈夫じゃない一週間だった。




「じゃーねー」


友人に向かって叫ぶ。


「ちゃんと家かえんだよー?寂しいからって、そこらへんの男捕まえたりすんなよー?」


「わかってるわよ、朝までオール死ね死ね団よっ」


「…自棄になるなー」



自棄になった友人と駅で別れる。


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