クリスマスに泣かないように



「――っ」


思わず彼を凝視する。

てへっ♪という感じのノリで話していい事柄じゃない。

どうしよう、情報処理が追い付かない。


え?別れてきちゃった?
別れてきちゃったの?


別れてきたってことは、このボストンバッグは…


「ああ、それ荷物ー」


「泊まり込む気かい!」


用意周到すぎんだろ!

ボストンバッグとタカシを交互に見ながら、私は必死に口を開けた。


「な、んで…」


「……もう、嘘つきたくなくなったんだ。自分に」



悲しそうな顔は、笑ってなくって。

どこか真剣だった。



「結構ツマとは長かったんだ。だからきっと結婚してもうまくやれるって思ってた。

だけどさー、結婚したら事務的になって、愛想笑いしかしないの。

結婚前は笑いあえたのにさ。
今は、ただの家事ロボットって感じ」


紙切れ一枚で安泰が訪れる。

“カノジョ”を終えたオクサンは、家事ロボットになった。

愛なんかどうでもいい、金だけ入れてくる男の家事を淡々とこなす。

それがどうしようもなく嫌になったのは、前に聞いたことがあるから覚えていた。


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