クリスマスに泣かないように
こういうところが好きだった。
秀でた才能があるわけじゃないし、容姿がすこぶる良いわけじゃない。
ちょっとおどけたように喋るところや、ふにゃりと溶けたみたいに笑うとこ。
一回私が言った事を忘れないところ。
コーヒーを煎れるのはインスタントでも下手くそなのに、なぜかココアだけは美味しいとこ。
猫が好きなとこ。
ヤキイモが好きなとこ。
私を本気で好きなとこ。
全部だいすきで。
許されるなら、なんて美談にしない。
相手が、なんて被害者面しない。
ただ、だいすきで。
だいすきだから辛いの。
「…リエちゃん、泣くの?」
「ぅうるさい!タカシになんか泣くかっ」
「泣いてるじゃん。おれも泣くよ?」
「意味わかんないし…」
無神経め。
だけど、彼は私の最後の望みを否定しなかった。
私たちは、今日別れた。
クリスマス前1週間。
ギリギリだけど、一番辛い日にはならなさそうだ。