クリスマスに泣かないように
気づいた時は焦った。
何がきっかけなのか、何が魅力だったのか。
意味のわからない恋心に、戸惑った。
しかし相手は妻子ある身。
彼氏でもつくって誤魔化そうとしたが、もともとモテぬ身の上。
自力で恋心を誤魔化すしかなかった。
飲みに行こうと言われるたびに疼く胸を必死に隠し通す。
彼氏作れと笑われるたびに鼻が痛むのを、上を向いて誤魔化す。
そんな生活が半年くらい続いた、ある日のことだった。
『気づいて』と泣きながら言われたのは。
『は…?』
思わず、聞き返した。
飲みの帰り道、駅へ向かう途中にいきなり言われた。
『夏から秋に変わり、寒くなってきたね』『今年も彼氏なしのクリスマスになるのか、死ね死ね団入ろうかな』『し、死ね死ね団?』『知らないの?リア充成敗する団だよ』
そんな会話をしてたら、いきなり黙って。
『気づけよっ…リエ…』
リエと呼ばれたのは初めてだった