【完】翼龍 ヨクリュウ ~あたしとクールで腹黒な総長と~
「いらっしゃーい。
ささ、座って。」
と、幸が静寂をやぶる。
美紀もすこし微笑みながら
促されてあたしの斜め前に座った。
い、言わなきゃ。
震える身体を静めるように
腕をさすってみる。
一言。
たった、一言謝るだけ
そう、それだけだ。
分かってても、恐くて言葉が出ない
自分に言い聞かせても
いっこうに震えはとまらない。
大丈夫 大丈夫。
念じても効果がない。
言えない。やっぱりあたしには無理だよ。
そう思ったとき、
机の下から優しく手が触れる。
隣の涼を見ると軽く頷いてくれる。
“信じてくれている。“
そう感じた。
机の下で、涼の手を強く握りかえす
一人じゃない
こわくても、前に進める。
涼といるだけでこんなに強くなれるんだ。
唾を飲む。
そして、重い口を開いた。
「美紀、ごめんなさい。
叩いたり、怒鳴ったりしてごめんっ」
なぜか涙声になってしまう。
泣きたいのは、美紀の方なのに
「ほんと、ごめん。ごめんね」
泣いちゃダメだ。
必死に自分を叱咤する。