コトノハの園で


「深町さん、五月病にはなってない?」


ふいに、店長に心配をされてしまう。


「はっ、はいっ。でも私、焦ってばかりでミスも多くて……」


なのに、これ以上迷惑をかけてしまっていたら申し訳ない。……嫌だな、自分が。


「うーん、そうねえ、ミスはしないのが一番だけど、深町さんは二度目がないように心掛けてるでしょう? 大事なことよ。長所を誇れないのが悪い癖ね」


「癖……」


「自信のない顔はご法度。お客様にはハッタリも必要。自店の商品を薦めるのに、そんなふうだったら購入してもらえない。好きでしょう? うちのもの」


「っ、はいっ!」


わたしもよ、と店長も頷く。


「ちゃんと教え込むから、頑張りましょうね。――そろそろお昼休憩行ってきていいわよ」


「――ありがとうございます」


初めての職場が、この店長で、本当に良かった。


「いってきます」


他店でも新入社員の子がいて、彼女も同時刻に休憩だったらしく、私たちは一緒に社員食堂へ向かった。


< 120 / 155 >

この作品をシェア

pagetop