コトノハの園で


――


「深町さん、ケータイ鳴ってる」


従業員が店内で持ち歩くバッグは透明で、一緒に歩く彼女の方から透けて見えてた携帯電話を指摘された。


「あっ、ホントだ。ありがと」


母からのメールだった。内容を確認する。


「……」


「浮かない顔してる~。帰りに超重たい買い物でも頼まれた?」


「それも最悪だけど、違うよ~。なんかね、図書館から私に連絡あったみたい、何度も」


そういえば、家でも言われてた気がする。最近忙しかったし、無意識に聞かないようにしてたのかもしれない。


でも……


「早く本を返してください、とか?」


「延滞はしてないよ。でも……なんでだろ」


……ひとつだけ、気になっていたことはある。でも、メールで済ませただけ。


香田さんは大丈夫だって言ってくれたんだし。


社員食堂にあるテレビではローカルニュースが流れていた。私はそれを指差す。


「……あの図書館からの連絡だよ」


「そっかー。だったら、ちょっと行くの怖かったりするよね」


漏らした先の彼女は、彼女なりの解釈をして私の心中を察してくれる。


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