コトノハの園で
私が言葉を濁し気味でいると、香田さんがひとつ提案をしてくれた。
「だったら、それでもいいわよ。閉館後でも連絡もらえればね」
「でも……悪いです」
「いいのよ。どうせこの件で最近残業ばかりだし、来てもらえるなら早い方がこちらとしても好都合なんだけど」
いつかは行かないといけないことなんだし。
「そういうことなら――」
ということで、その場で来館予定日は決められることとなった。それ以外のどこかで、香田さんも絶対に残業しないで帰ってやるのだと宣言していた。
「本当に、忙しいみたいですね。大丈夫ですか?」
「実はわたしが一番激務なんだけど、大丈夫よ。ありがとう。――ああそうだ。桜が今日そっちに行くって言ってたわ」
「桜ちゃん?」
いきなり話が変わる様子は姉妹でよく似ていると思う。言ってしまってから、香田さんは聞かなかったことにしてくれと笑う。内緒だと桜ちゃんに言われていたことらしい。
「適当に驚いてやって。ご迷惑にならないといいんだけど」
「ふふっ。そんなことにはならないですよ」
じゃあ後日――もういちど約束をして、私から通話を終えた。