コトノハの園で


私が言葉を濁し気味でいると、香田さんがひとつ提案をしてくれた。


「だったら、それでもいいわよ。閉館後でも連絡もらえればね」


「でも……悪いです」


「いいのよ。どうせこの件で最近残業ばかりだし、来てもらえるなら早い方がこちらとしても好都合なんだけど」


いつかは行かないといけないことなんだし。


「そういうことなら――」


ということで、その場で来館予定日は決められることとなった。それ以外のどこかで、香田さんも絶対に残業しないで帰ってやるのだと宣言していた。


「本当に、忙しいみたいですね。大丈夫ですか?」


「実はわたしが一番激務なんだけど、大丈夫よ。ありがとう。――ああそうだ。桜が今日そっちに行くって言ってたわ」


「桜ちゃん?」


いきなり話が変わる様子は姉妹でよく似ていると思う。言ってしまってから、香田さんは聞かなかったことにしてくれと笑う。内緒だと桜ちゃんに言われていたことらしい。


「適当に驚いてやって。ご迷惑にならないといいんだけど」


「ふふっ。そんなことにはならないですよ」


じゃあ後日――もういちど約束をして、私から通話を終えた。


< 124 / 155 >

この作品をシェア

pagetop