コトノハの園で
席に戻り急いでお弁当を食べていると、食事はすでに終了していた向かい側の彼女がお茶を持ってきてくれた。
「ありがとう」
「うん。電話、大丈夫だった?」
「問題なしでした」
「みたいだね。深町さん、嬉しそうな顔だし」
「っ!?」
大きく口に含んだおにぎりが喉に詰まりそうになってしまった。慌てて飲んだお茶はとても熱くてまた苦行。
「っ? 私っ!? 図書館に呼び出しくらったのにっ? こう見えても予定が満載で忙しいんだからね。……それに、複雑な顔でなきゃ、いけないのに……」
もう終わったことだけど。けど、だからこそ、気まずいことだってあるじゃない。
「ん? なんで?」
問われたけど、秘密、とだけ答えた。
まだ知り合って間もないけど、彼女の本能的な勘が私は大好き。それとも、私はもしかしてとても顔に出やすいたちだったのか。けど、秘密と言ったことにそれ以上追求されることはなく。
「そっか。忙しいのかぁ。 デート? じゃあ、来週のアレは無理?」
こうやって含みもなく訊いてくるところも大好きだ。
「それは行けるよ。そして、残念ながらデートではありません。ちょっとここ一年くらいのツケがね……」
何も知らないから吐き出せる愚痴でもある。
「ずっと、友達とかからの誘い断ってる時期があってね。来年来年って約束してたら今満載、みたいな」
いや、訂正。愚痴じゃあない。嫌なことなんて、ひとつもなかったんだから。