コトノハの園で
休憩時間の残りの話題は、来週開催されるお菓子売り場全体の懇親会に費やされた。
向かいの席の彼女は、あまり接点のない和菓子売り場で働く彼に密かに憧れている。女子校の男性教師並みに希少価値あるお菓子売り場の男性従業員は、加えて歳も若くて愛想もいいから、彼女以外からもとても人気がある人だ。
「何着てけばいいかなぁ?」
なんて、頬染め相談してくれる姿は可愛くて仕方がない。
「そっちの制服はパンツスタイルだし、やっぱりスカートっていうのは決まりじゃない?」
「高いヒールは絶対禁止なのも決定事項」
「どうして?」
「だってさ、もし隣に行けたとして、こっちの方が背ぇ高かったらショック……」
長身な彼女は、同じく長身の私の親友と同じことを言う。
「あーあ。深町さんみたく、ちんまり可愛ければ良かった」
「うっ……どこがよ。ディスプレイの後ろにいると見えないんだから、私」
そう。お店の作業スペースにいる時はお立ち台が欲しいくらい。なのに彼女は、それはステキと目を輝かせる。
まあ。可愛い女の子の仕草に怒れるはずもないんだけど。
「来週、私も協力できることあったら言ってね」
「ありがと。深町さんは誰かいないの?」
「ないよー。残りの人はお父さん世代じゃない。それに、お菓子に埋もれていられればそれでいい」
嘘はない。そこそこ本音。だからとても楽しく、女子らしい会話だった。