コトノハの園で
「――ちょっと前のことなのに懐かしいな。最近ね、よくそんなふうに思うことたくさんあるんだ」
ハンバーグを頬張りながら、桜ちゃんが感慨に耽る。
「だね。それは桜ちゃんの成長の証かもよ?」
「どーして?」
「って、偉そうに私が言えることでもないんだけどね。――小さな子どもは、あまり思いを馳せたりなんかしないでしょ」
「大人の特権?」
「そうであって、ほしいかなって」
「寂しくもなっちゃうけど、これがいいの?」
桜ちゃんは理解に苦しむといった様子だ。
「うーん。頷き難くはあるけど……でも、抱え込めるくらいの度量にはなれてるってことだから、いいんじゃない?」
「……、難しいねぇ」
「ね。私もまだまだですよ」
制服が変わるだけで気持ちは変わるもの。桜ちゃんは、その振り幅が大きいように思う。
こんな考え。ただ毎日をこなしてた高校生の頃の私には無かった。
「桜ね」
「うん。なあに?」
「自分は、もうすでに大人だと思ってた。みてくれはもちろん、中身だって。――特別にね、なれると思ったの。てか、もうすでに結構そうなんだって……でも、それは間違ってて、特別だと思ってた桜への扱いは、桜が子どもだからもらえてたものだったの。それは、すごく寂しいことで……」
「桜ちゃん?」
詳細なんて全く分からなかったけど、きっとそれは悲しかったこと。なのに、桜ちゃんはあくまで凛々しく、そして恥らう。