コトノハの園で
そうして、森野さんは忘れることなく私の問いに答えてくれる。
「将来は、ちゃんと家庭を築きたいのです」
「結婚したいから彼女が欲しいんですか? なんかイヤです……その思考の行き着き方」
「っ!! ぼっ、僕だって、結婚の前に恋愛があって、それがどれほど大切かくらい解っていますっ! ――僕の両親は、とても素敵な夫婦で。恥ずかしいのですが、それに憧れてしまって。いずれは、僕も、と、思ってしまうんですよ」
「そっ……」
そんな、ものすごく可愛い答えが返ってきてくれるとは思わなかった。
こんな本心、こんな踏み込んだ会話。こんなに、幸せだなんて。思ってしまうなんて……ごめんなさい。
「ふふっ。夢見る乙女みたい」
「どうとでもっ、言ってください。深町さんには、もう情けないところは散々見られているので、今さら……」
なんだか、とても心に沁みて、じんときた。
「けど、女性を前にするとおかしくなってるなんて……結婚云々は当分言いません。日常生活さえままならないのですから」
「理由とか原因、あったんですか?」
「……」
頭を抱え、出口の見えない思考に耽っていた森野さんは、少しだけ迷ったあと、教えてくれた。
「そっ、それはですね――」
少しだけ悲しそうに、少しだけ泣きそうに、少しだけ、拳を握って、
自虐的に微笑んで、森野さんは、大きな白い息を吐きながら言った。
こんなときなのに、私はその姿に見蕩れた。