コトノハの園で
「――、そうですか」
「勿論、嘘をつかれたのもありますが、それよりも……。好きな人がいても、僕とそういう関係になれて、彼もそれを納得してるなんてそんなこと。おっ、お腹の中には命が育ってるんですよっ!? 大切な存在を身体に宿しているのに信じられないっ。……けれど、僕だって、責められるべき軽率な行動は……。子どものことだって……綺麗ごとを言いましたが、全てを知って自分が傷付いてから、ようやく命の尊さを実感したんです。遅いんです。僕との子どもではなかったけど、僕だってそうなる可能性のことを……」
何も分かってもいなかったのに、僕は……。
「僕は、とても卑怯で汚かったんです。いや、今だって…………、っ、でもっ、そこで立ち止まってしまうのは違うっ。間違えてしまったことは心に留めて、全ては無理かもしれないけれど、あの時、理不尽に傷付くしかなかった命のような存在を、二度とつくらないように、僕は……」
言葉にすれば、ほんの僅か。
けれど、とても苦しく永い。
今も、最初は平気でいられたけれど……。
平気なふりをして顔を上げた。慰められる立場ではないし、望んでもいない。
深町さんがこちらを向く。
僕は、思わず目を逸らした。