コトノハの園で


笑ってしまった。


笑えるのだとも。


賭けに負けたら何を差し出してくれるのだろう――他を考える余裕もあってくれた。


「森野さんは汚くないです。とっても――とてもキレイな人」


小さな身体を丸め、小さな手を、まるで祈るような仕草で口元に持っていき、深町さんは小さく呟いた。


言葉とともに漏れる白い息は、神様に届けと言わんばかりの勢いで空に舞い、消えていく。


深町さん本人は気付いていないようだけれど、その顔は、また始終真っ赤だったと思う。


断言出来ないのは、僕が“始”と“終”しか見られなかったせいだ。


曖昧すぎることだったし、指摘してしまえばきっと不安定な空気になるだろうから、これは、心の中だけで止めておこう。





相変わらず女性は苦手だけれど、少し霧が晴れた。


それはドーナツの穴くらいの、とても小さな。


けれど、大気の通りは確実に変わり、このまま視界は全開になっていってしまいそうなほどの勢い。







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