コトノハの園で
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二月。
「森野さん、これどうぞ」
そう言って渡したのは、紅いリボンが結ばれた小箱。
蓋を開けなくても一目瞭然なパッケージ。
中身はチョコレート。
あ、そうか。“渡した”だけだと、なんて表現間違い。
森野さんへ“投げて”渡した。
「…………」
隣のベンチで森野さんは困惑している。
私はわざとらしく溜め息をつく。
「そんなに困っちゃって……。いくら森野さんでも、このやりとりを避け続けられたなんて言いませんよね? 日本の悪しき風習。今までどう乗り切ってたんですか」
「そっ、それは……助かることに、職場では、僕の知らない間に置かれてあったり。……今思えば、気を使ってもらっていたのでしょうか」
「訊いてみたらいかがですか?」
「……」
「嘘です。気づかないまま、厚意を受け取っておくのがいいこともありますよ」
「僕の厚かましい思い上がりかもしれないですし……」
「考えなかったことに目を向けられるようになったのは、とてもいいことだと思いますよ」
あなたの周りはとても優しいんだと、もっと分かっていってください。