コトノハの園で


「――それにしても、ちょっと意外でした。これがバレンタインのチョコレートだと、そんなにあっさり認めてもらえるなんて。素知らぬ態度で流れていくかと」


当日でもない、もう少し先のこと。


それに、私からの。


鈍感なのか違うのかは、前より分かりにくくなったのかもしれない。


「何故ですか?」


「何故でしょう?」


「…………」


「分からないならそのままで。その他なら、分からない、ということにしておきましょう。少し意地悪をしてしまいました。ごめんなさい」


「――、分かりました」


その沈黙の間には何があったのか。


うん。でも、


それでいい。


「そのチョコレート、サンプル品で、みんなに配っている最中なんです。だから、森野さんにもおすそ分けです」


本当にそういったものもあったけど、それは友達に配り終えた。


こんな豪華なサンプル品、あるわけがない。


でも、突き通す嘘じゃないから浅はかでいい。


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