コトノハの園で
8・アオイハルなハナサクオトナタチ
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あまり詳細でない手書きの地図を片手に住宅街を歩く。
一度遊びに来い――強引に呼び出された。
空いている夜は今日しかないとのことで、勤務後の足で急遽手土産のひとつでも用意し、僕は健人たちの新居へ。
健人と伊達さんの結婚式はまだだけれど、一足先に入籍と生活を始めたらしい。お互いの職場にも都合が良く、新築の物件があったのだそうだ。
やがて、目指す建物に到着すると、そこは一棟に六世帯が入居する可愛らしい外観のアパートだった。健人にしては珍しい選択。伊達さんの好みの方が強い。
結婚とはそういうものなのだろう。
なんだかそういうのもいい――惚けながら二階へ上がり、インターホンを押すと、間髪入れず勢いよくドアは開いた。
「いらっしゃいっ! 森野君」
「うわぁっ!!」
必要以上に驚いてしまった僕は、その場でしりもちをついてしまった。
「ごめーん。健ちゃんが出れば良かったね」
「いや、伊達さん。これはそういうのじゃないから」
弁解に対し、室内から呆れた声が飛んでくる。
「千花、放っておいていいぞー」
「うん。そうだよ、伊達さん」
「……そう? ――では改めて。いらっしゃい、森野君」