大嫌いなアイツの彼女になりました。
双葉ちゃんはそんなあたしをじーっと観察している。
あたしはバレないかとドキドキしながら、早く視線が外れるのを願う。
「……ふぅーーん」
だけど双葉ちゃんはそう不服そうな声を出した後、すぐに視線を望月相馬に移した。
……どうやら、気づかれていないようだ。
ほっと安堵したのと同時に、自分はそれほどまでに人の記憶に残らないのかと、何とも複雑な気持ちになった。
「どうだよ、可愛いだろ♪」
望月相馬は楽しそうに笑うが、双葉ちゃんの目は怒りに満ち溢れている。
「……嫌だっ」
「「はっ?」」
そして、双葉ちゃんが不満気に出したその言葉に、あたし達の声が重なった。
「嫌だ嫌だ嫌だっ!こんな子、あたしの方が絶対可愛いよ!!」
「えっ………」
「お兄ちゃんに似合わないっ!あたしは認めないからねっ」
双葉ちゃんはそう言うと、あたしをビシッと指差した。
驚きで、つい、あたしは凍り付いてしまう。
「ちょ、双葉!そんなこと言ったら純香ちゃんに悪いだろ」
「お兄ちゃんは黙ってて!あんた、本当にお兄ちゃんのこと好きなの!?」
あたしのことなんてすっかり忘れている双葉ちゃんは、あたしをキツく睨みつけて強い口調でそう言った。
あんた……って言われるとなんか悲しいな。
あんなに頑張って面倒見ていたのに。
そう思うのは、あたしのエゴなんだろうか。