大嫌いなアイツの彼女になりました。





 いつものことだけど、やっぱりいきなりこういうことをされると、冷静になれない。

 頭がついて行かないよ……。




「いやー、なんか今日、何もなかったなーって思ってさ」


「別に何もなくていいと思います……」


「いいじゃん。本当は俺、ずっとこうしたかったんだ」


 そう言って望月相馬はあたしの肩に顔を乗せた。



 ドキドキドキ……って、静まらそうとしていた胸が、もっと強く、大きく音を鳴らす。

 本当、毎度毎度、心臓に悪いんだってば。




「……ねえ、純香ちゃん?」


「えっ……?」


「純香ちゃん、怒ってない?」



 いきなりの問いかけに、あたしは不思議に思う。


「怒る?なんで?」


「いや、いくら勝負とはいえ、彼氏だったら彼女を勝たせるべきだったかなって……」

 段々と望月相馬の声が小さくなっていく。



「全然!むしろ気を遣われる方が嫌だもん!!それに、双葉ちゃんすごかったし」

 あたしは、優しく微笑んだ。



「そう……?ならいいんだけど……」


「うんっ」


 陽が沈みかけているから辺りは暗くなり始めている。

 そんな街に、夕日が真っ赤に輝き咲いている。


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