大嫌いなアイツの彼女になりました。
~純香Side~
「ねえ、マジでなんなの。あんた」
えっと、確かこの人山口って名前だったよね?
いつも素敵なメイクと茶色の長い髪で可愛くしている山口さんが、鬼のような形相であたしを睨んでいる。
いやー、女子って怖いわー。
なんて、冷静に思っているあたしも、怖いのかもしれない。
誰も来ない、来るはずのない、体育館裏の女子トイレ。
呼び出しでは、定番だよね。
定番だからこそ、何かされても誰も来ないため危険だ。
あたしの前には、あたしを囲むように並んでいる山口さん含め五人の女子がいる。
……しまったなぁ。
あたしは安易について来てしまったことを、今更になって後悔している。
山口さんに怒られながら、呼び出しを喰らったときのことを思い出した。
他クラスだし、顔を見たことはあるけど話したことはなかったから、こんな人だとは思わなかったんだ。
『ねえ、椎名さんだよね?ちょっと話があるんだけど、いいかなー?』
そうあたしを呼んだ時の山口さんは、笑顔で優しい声だった。
周りにいた子達も、みんなニコニコ笑っていたし。
……ここに来るまでは、だったけど。
「ねえ、聞いてんのっ!」