大嫌いなアイツの彼女になりました。
突然耳に入ってきた声は山口さん達のものじゃなくて、驚いたあたしは、瞑っていた目を開けた。
てっきり山口さん達で見えないかと思っていたけれど、山口さん達もその声の主が気になっていたのだろう。
あたしとその人の間に、障害物は一切なかった。
「純香ちゃん……」
悲しそうな声でそう呟く彼の瞳は、切なげにあたしを捉えていた。
「望月相馬……」
あたしはさっきまでの怒りを忘れ、どうしたらいいのか分からず、戸惑いながら望月相馬を見つめた。
「そ、相馬くんっ!今の聞いた?椎名純香ってこういう人だったんだよ!」
そんな居心地の悪い空気を裂いたのは、山口さんだった。
さっきまであんなに恐い顔して暴言を吐いていたのに、今はあたしを呼びだした時のような可愛らしい顔に戻っていた。
……本当、よくやるよ。
そう思ったけど、山口さんに呆れている余裕は今のあたしにはなかった。
きっと、あたしが吐いた言葉は望月相馬にしっかり聞こえていたはずだ。
だって、山口さんがこんなに必死になってアピールしているのに、望月相馬はあたしから視線を外してくれない。
だから、あたしも望月相馬から目を逸らすことが出来ない。
「ねっ、最低でしょ?だからこんな女止めた方がいいって……」
山口さんがそう言いながら望月相馬に触れた時、やっと望月相馬があたしから視線を外した。