大嫌いなアイツの彼女になりました。







 気付けば、いつの間にか二人きりになっていた。



「……ったく。誰が香水臭い女を好きになるかっての。」

 望月相馬は、山口さん達が去って行った方を睨むように見つめた。


 助けてもらったのにお礼も言わず、あたしは俯いた。


 どんな風な反応をしたらいいのか分からなくて。

 何を言ったらいいのか分からなくて。

 どんな風に望月相馬と向き合えばいいのか、分からなくて。


 拳をぎゅっと強く握りしめた。



「はぁ……本当、嫌になるよな」

 望月相馬は、ははっと笑いながらあたしに近づいて来る。


 けれど、その笑いは気持ちがこもっていないように感じられた。



「……ねえ、純香ちゃん?」


「…………。」


 望月相馬の声から、気を遣っているのが分かる。


 聞いていたのなら、分かっているのなら、突き放してくれればいいのに。

 「最低だ」って、山口さん達みたいに罵ってくれればいいのに。

 そうやって優しくされる方が、辛いんだよ。




「………純香ちゃん」

 望月相馬は悲しそうにあたしの名前を呼ぶ。


「っ…………」

 あたしは眉をピクッと動かした。



 望月相馬はそんなあたしに、ゆっくりと手を伸ばしてくる。



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