大嫌いなアイツの彼女になりました。







「………でも」


「でもじゃない。あたしね、小学五年生の時、あんたに……いじめられたんだよ」


「っ………」


 望月相馬の顔が苦しそうに歪む。




「……再会した時、あんたは助けてくれた。……嬉しかった。いじめられたことがあったとしても、素直に嬉しかった。けど……あんたは、あたしのこと覚えていなかった」


「それはっ……」


 望月相馬は何か言いたそうにするが、あたしが望月相馬に視線を送ると、口を閉ざした。



「……最低だと思った。あんなに、苦しんだのに。だから……復讐してやろうと思ったの」


「…………。」


「だから、あんたと付き合うことにした。当たり前じゃん、会ってすぐの人と、何もないのに付き合うわけないでしょ。」


 望月相馬は視線を落とした。

 その姿に胸が痛むけど、あたしは話し続ける。



「……最低だって、罵ってくれて構わない。だから、別れて、下さい」


 言葉が詰まる。

 声が、出ない。


 そんなあたしを見つめると、望月相馬は、

「……俺のことを、今まで好きだって思ってくれたこと、一度もなかったの?」

 と言った。


 胸がぎゅっと、潰されそうだった。



「………ごめんね」

 あたしはそう言って、逃げるようにその場を走り去った・・・。




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