大嫌いなアイツの彼女になりました。
「えっ?」
その言葉に驚いたあたしは顔を上げた。
中川くんはあたしから手を離し、ポケットに両手を突っ込むと、
「純香ちゃんってさ、めっちゃ純粋って言うか……綺麗に思えるんだよ」
「……そんなことないよ」
「うん、分かってる。誰だって汚い所くらいあるよね。」
中川くんは、ははっと笑った。
でも、すぐに真剣な顔になる。
少しだけ悲しそうなその顔に、あたしの胸がぎゅっと掴まれる。
初めて中川くんが見せた、笑顔じゃない〝顔〟。
「だけど俺、今まで、純香ちゃんには汚い所ないんだろうなって思ってた。だから、近づきにくかった。手を伸ばしにくかった」
「……そんな風に、思ってたんだ」
「うん……」
中川くんは少しだけ微笑む。
「けど、今回のことで、少しだけ気持ちが楽になったよ。純香ちゃんを近くに感じたから。相馬もいたし、遠く思っていたけど……」
中川くんはそこまで言うと、少し視線を落とした。
そしてもう一度あたしの顔を見ると、
「こんな時に、ごめん……俺と、付き合う気ない?」
って言ったんだ。