大嫌いなアイツの彼女になりました。






 アイツ……望月相馬は、派手目のTシャツの上に黒いベストを羽織って、下は茶色いジーンズというカジュアルだけどカッコいい服装。

 それが似合うから、ムカつくんだけどね。


 早く映画を観に行こうと歩きだそうとすると、

「待って」

 と、止められる。


「えっ?」

 驚いて隣にいる望月相馬を見ると、コイツはにこにこ笑っていた。



「手」


「はっ?手?」


「うん、手繋ごうよ」


「えっ……」


 少し頬を赤く染めながらそう言うコイツに、あたしも頬を熱くさせた。


 いや、だって。

 そんなストレートに言ってくるとは思わなかったから。


 普通さ?自然と繋ぐもんでしょ?

 あまりに唐突に、ストレートに言われたもんだから、恥ずかしくて。それを隠せなくて。


 そんなあたしを見て、望月相馬は、

「……嫌?」


 コイツ、ズルすぎる。


 なに不安そうになってんの。

 なんで顔覗き込んでくんの。

 きっと真っ赤だろう顔を隠そうと俯いてるのに。

 近いって。


 あー、もう!なんであたしドキドキしてんの。



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