大嫌いなアイツの彼女になりました。






「「っ!」」



 いきなり、おじいさんのカツラが取れたのだ。






「……ぶはっ」


「ちょ、ちょっと、失礼だよ!」



 望月相馬はもう我慢できなくなったようで、吹き出すように笑い出した。

 あたしは慌てて止めたけど、やっぱりあたしも笑ってしまって。



「ふふふっ」


「はははっ」


 二人で顔を見合わせて大笑い。




「おじいちゃん、なんか落ちてきたよー」


「っ!な、なななんでもないぞ!」


 おじいさんは恥ずかしそうにこちらを一瞬見た後、真っ赤な顔のまま孫の手を引いて走り去っていってしまった。



「あーあ、行っちゃったよ」


「カツラ、忘れてるね……ふふっ」


「あー、傑作だな、これは」


 男の子の天然な言葉とおじいさんの慌て具合を今思い出して、また二人で笑った。

 二人のおかげで、一気に場が和んだ気がする。


「あー、面白かったぁ」


「なっ!」



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