大嫌いなアイツの彼女になりました。











「……まあ、いい映画だったけどさぁ」


 隣で、望月相馬の呆れたような声が聞こえる。

 でもそんなの気に出来ないくらい、あたしは感動していた。


 
 ペロの主人公の男の子を想う気持ちの強さに、思わず涙が零れたのが30分前。

 今は映画も終わり映画館から出てきたんだけど、それでも一向に泣き止まないあたし。


 もう、メイクとかボロボロだ……いや、まず周りからの視線の方が痛いや。

 結局、ラブハプ起こせなかったし……てか、今の今まで忘れてたし。



「うぅ……ぐすっ」


 普段滅多に泣かないあたしだけど、何故かこういうのだけは弱い。




「……ちょっとカフェでも行って落ち着こっか」


 望月相馬のその言葉を聞いてそちらを向いて、少し驚いた。

 彼はいつもみたく楽しそうに微笑んでいるんだけど、瞳は濡れていていわゆる涙目ってやつだった。




 ……そういえば。


 ふと、映画を観る前に彼が言っていた言葉を思い出す。

『多分泣くけど、男らしくねぇなって思わないでね?』



 あっ、て思った。


 きっと、コイツも感動したはずだ。

 きっと、映画を観てうるってきたはずだ。


 でも、泣いていないのは、もしかしたら。

 馬鹿みたいに泣いているあたしのため……?



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