大嫌いなアイツの彼女になりました。






 だけど、いきなり耳元で大きい声を出され、あたしはビクッと体を揺らした。



「どうしたの?」


「あ、いや、なんでも……」


 まさか、「靴擦れした」なんて言えない。

 そんなの、なんか恥ずかしいもん。


「さっ、次どこ行こっかー!」

 だからわざと元気よくそう言って、歩き出そうとする。


 でも、足に激痛が走って、

「っう………」

 すぐしゃがみ込んでしまう。



「……?」


 きっと望月相馬は男だから分からないんだろうな。

 ずっと不思議そうな顔をしている。



「な、なんでもないっ……」


 そう言って立ち上がろうとすると、

「えっ……?」


「掴まって」

 望月相馬が、手を差し出してきた。



「ほら、怪我人さん」


 ニコッと望月相馬は笑うけど、あたしには理解できなくて。

 その行動も、言葉の意味も。



 だってあんたって、そういう人じゃないでしょう?



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