大嫌いなアイツの彼女になりました。






 アイツ、あたしが靴擦れしているのに気付いたんだなぁ。

 あたし、分かりやすかったかな?


 もしそうだとしても、望月相馬は気付いたんだ。

 そして、お姫様抱っこしてあたしが歩かないようにして、ベンチに座らせた。


 それは、紛れもない事実。


 だって、今もお姫様抱っこされた時の恥ずかしさを鮮明に覚えてる。

 あたしの痛々しい足の近くに無造作に置かれているヒールの片方と、ベンチに乗っている靴下も、その証明になっている。



 望月相馬は、あたしを心配してくれたんだよね?

 それで、こんなこと……


 今は何処かへ行ってしまっているけど、それもあたしのことでだろうか。

 あたしは足をブラブラ揺らした。



「はあ……復讐、出来ているのかなぁ」

 そっとそう呟いた時、望月相馬が走ってこっちに帰って来た。

 その手には、さっき居なくなった時は持っていなかったクロックスがあった。


 あたしの前まで来ると望月相馬はクロックスを床に置いて、

「はい、絆創膏貼ったらこれ履いてね」

 と言って絆創膏をあたしに渡してきた。



「え………でも」

 クロックスなんて、この服には合わない。


「いいから。足痛めてまでデートして欲しくないよ」


「っ!」


 望月相馬の笑顔が、あたしの胸を跳ねさせた瞬間だった。


 本当のところ少し恥ずかしいんだけど、望月相馬の笑顔に負けてしまって、あたしは右足をベンチの上に乗せた。




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