大嫌いなアイツの彼女になりました。
「……純香ちゃん?やっぱり、嫌?」
だけどその悲しそうな声にハッと我に返り、首を横に振った。
「……じゃあ、もう俺のこと避けない?」
あたしは小さく、でも何度も頷いた。
本当は、気持ちの整理がついていないんだけど。
でもこの状況で、望月相馬の悲しそうな表情を見た後で、〝嫌〟なんて言えなくて。
「……そっか、良かった」
その安堵したような声に顔を上げると、望月相馬は嬉しそうに微笑んでいた。
どうしたらいいのか分からないあたしは、その顔をただ見つめることしか出来なかった。
「……じゃあ、帰ろうか」
望月相馬はそう言うとあたしの右手を握った。
そしてゆっくりと歩き出す。
もちろん、あたしも引っ張られるように歩き出した。
「……でね、気付いたら9時!もうヤバいって思ったよ」
なんて、今朝の話を楽しそうにしている望月相馬を横目でチラッと見た後、あたしは視線を繋がれた右手へと移した。
望月相馬の手の温もりが、右手を通して全身に伝わる。
今あたしはどうするべきなのか分からなくて、手を振り払うことも握り返すことも出来ず、ただずっと望月相馬の温もりを感じていた・・・