大嫌いなアイツの彼女になりました。
その言葉に驚いて中川くんを見ると、
「だから、相馬からたまに純香ちゃんの話聞いてたんだ」
と中川くんは言った。
「あ……そうだったんだ」
あたしはそう言いながら、始業式の時のことや広まった噂で知ったんじゃないんだと思った。
「……ていうか、二人が出会った時というか再会?した時も知ってるし。もちろん、相馬の告白シーンも、それをOKした純香ちゃんの顔も、バッチリ見てたよ♪」
中川くんは意地悪そうに微笑んだ。
「え?な、なんで?」
あたしは思わず我を忘れて思いっ切り動揺してしまう。
だって、中川くんの話を聞いてると、その場にいたようにしか思えないから。
「俺、あの時あの場所に相馬と一緒にいたからだよ。純香ちゃんは気付いてなかったかもね。でも、相馬の後ろでずっと見てた」
中川くんはそう言うと、ははっと楽しそうに笑った。
あまり覚えてないけど、確かに望月相馬の後ろに誰かいた気がする。
中川くんはあたし達が再会した時に付き合ったってことも知ってるし、嘘を吐いてるようにも見えない。
「そうなんだ……ふふっ」
たったそれだけのことだけど、なんか妙な親近感を持ったあたしは、緊張を解いて少し笑った。
中川くん、見た目は恐いけどずっと微笑みながら話してくれるし、案外良い人なのかも。
口調も声のトーンも笑顔も、話してみると全てが優しくて、あたしは中川くんが隣の席で良かったなって思った。
夏音や希依とは席が離れちゃったけど、なんとか楽しくやっていけそうだ。
少し嬉しくなって、あたしは中川くんに釣られるように微笑んだ。