大嫌いなアイツの彼女になりました。
「わっ……」
驚いて小さく声を上げるが、あたしを抱きしめる望月相馬の腕が震えているのを不思議に思い、辺りを見渡す。
すると、
「あっ……」
さっき望月相馬がいた場所にこんにゃくが吊ってあるのを見つけた。
最近ではあまり見かけない、こんにゃくを吊っておくというアナログな罠。
もしかして、それに引っ掛かってこんなに怖がってるの……?
こんにゃくが吊ってある高さを見る限り、望月相馬の顔に当たったんだろう。
そりゃ、いきなり顔に冷たいものが当たったら驚くけど、いくらなんでもこんなにビビらないって。
「なんか冷たかったー!」
望月相馬があたしを抱きしめる腕に力を込める。
あたしは、どれだけ怖がりなんだろうと微笑ましく思って、ふふっと小さく笑う。
「笑わないでーっ」
「こんにゃくだよ、大丈夫」
震えている望月相馬の背中をポンポンと叩き、慰める。
すると、こんにゃくだったということを知り、ようやく落ち着いた望月相馬はゆっくりとあたしから離れた。
「ふふふっ」
「……今の、なかったことにして」
「それは無理だなー」
恥ずかしそうに顔を背ける望月相馬に、あたしはそう言って笑った。