大嫌いなアイツの彼女になりました。
キス……。
あの日の記憶が蘇ってきて、胸がぎゅっと絞られたように痛む。
付き合ってるから、やっぱりそういうのした方がいいのかな?
でも、嫌だ……。
何も言葉を返せず俯いていると、
「くすっ」
という望月相馬の笑い声が聴こえてきて、顔を跳ね上げた。
「大丈夫。純香ちゃんの嫌がることはしないよ」
あたしの目に映った望月相馬の表情は、とても優しい笑顔で。
どうしてあたしの気持ちが分かったのかと驚いたけど、望月相馬の優しさが嬉しくて、あたしもニコッと微笑んだ。
そして、ついに頂上が目前になった。
けれどあたしは、変わらず景色を楽しんでいた。
でも、
「ねえ、純香ちゃん。ちょっと」
と望月相馬に再び名前を呼ばれ、視線を向けると望月相馬はニコッと笑った。
「目、瞑って」
「目……?」
「うん、早く。頂上に着いちゃう」