大嫌いなアイツの彼女になりました。
立ち上がってあたしの目の前で微笑んでいる望月相馬を見ながら、驚きで言葉も出なかった。
だけど、少しずつあたしの心の中が温かい何かでいっぱいになっていくのを感じる。
「これ………」
「純香ちゃん、誕生日おめでとう!」
望月相馬はそう言ってへへっと照れ臭そうに笑った。
このネックレスは、誕生日プレゼントなんだよね?
ネックレスにそっと触れ、その感触を確かめる。
トクントクン……
胸の鼓動が、高鳴っていく。
誕生日プレゼント……。
初めて貰う彼氏からの誕生日プレゼントは、友達から貰うものとは少し違って。
「あ、ありがとう……」
ニコって笑顔でお礼を言いたかったけど、微笑んでも恥ずかしくて俯いてしまう。
だけど、嬉しいって気持ちがあたしの心を占領している。
「んっ」
突然、そんな声と共に俯いているため狭まっている視界の中に望月相馬の右手が入ったため、あたしはゆっくりと視線を上に動かした。
「ねえ、さっき言ったジンクス覚えてる?」
望月相馬はそう言って窓の外に顔を向けた。
それを追うように、あたしも窓の外に視線を移す。
いつの間にか、ゴンドラは頂上を越え下り始めていた。