大嫌いなアイツの彼女になりました。
それは、あたしの手でも望月相馬の手でもなくて。
だからビックリしたあたしは、その手の先を目で追う。
そこには、元々色が薄いのか、染めたわけではなさそうな焦げ茶色のミディアムヘアであたしより少し背の低い女の子が、驚いたような表情をしてあたしを見つめていた。
その子は可愛らしい整った顔をしていて、右サイドの髪の毛を耳の少し上で緩く結んでいる。
ここら辺にセーラー服の高校はないのにセーラー服を着ていることを考えれば、彼女はきっと中学生だろう。
彼女はあたしとほんの少し見つめ合った後、不意に顔を背けそっと口を開く。
「……えっと、ごめんなさい……」
「いえ、こちらこそ……」
たったそれだけの短い会話をした後、あたし達はどちらともキーホルダーから手を離した。
ああ、気まずいな。
なんて思いながらそのキーホルダーを見つめていると、
「ああっ!」
突然望月相馬が大声を出した。
その声に、あたしの心臓がビクッと大きく跳ね上がる。
何事だと思って望月相馬に視線を移すと、望月相馬はあたしを…というよりあたしの向こう側にいる女の子をじっと見つめていた。
「ど、どうしたの?」
望月相馬にそう話しかけた瞬間だった。
「お、お兄ちゃんっ!?」
またも驚いてしまうほど大きな声が、今度は反対側から聴こえてきた。
あたしはそちらを向く。
見えたのは、キーホルダーにあたしと同時に触れた女の子の、口をアングリ開けて驚いている顔だった。