大嫌いなアイツの彼女になりました。
「……お兄ちゃん?」
彼女もどうやら望月相馬を見つめているようで、二人に挟まれているあたしは交互に二人の顔を見合った。
そして、懐かしい記憶を思い出し、ハッとする。
……そうだった。
確か、望月相馬には3歳年下の妹がいた。
名前は確か、双葉(ふたば)だった気がする。
小さくてまだ望月相馬と仲が良かったころ、双葉ちゃんと何度か遊んだことがあった。
そんな双葉ちゃんは、望月相馬の妹らしい明るくて強気で我が儘な性格だった。
はっきり言って、あたしは双葉ちゃんが少し苦手だった。
言うことは聞かないし、イヤイヤばっかりだったし。
気に入らないことがあればすぐに泣くから、ご機嫌を取るのにもとても苦労した。
色々振り回されて、双葉ちゃんと遊んだ日は疲労感が凄かったのを、今もよく覚えている。
「双葉、お前なんでこんな所にいるんだよ」
「友達とショッピングしてるのっ♪今は別行動なんだけどね」
「そっかそっか」
仲睦まじそうな兄妹の会話を聞きながら、ゆっくりと後ろに下がって二人の間から抜ける。
そして望月相馬の後ろにこっそりと隠れた。
遊んだことがあるってことはつまり、あたしと双葉ちゃんは顔見知りってこと。
望月相馬は完全に忘れているようだけど、昔から勘も鋭くしつこいぐらい色んなことを覚えている双葉ちゃんはあたしのことを忘れていないかもしれない。
双葉ちゃんに気付かれちゃったら、復讐計画が全て崩れてしまう。
だから、それを阻止するために望月相馬の後ろに隠れたのだ。
どうしよう……
ドキドキドキと、胸が不安な音を鳴らす。