音心不通
真新しい制服に身を包み
友人と楽しそうに談笑する人たちで
溢れかえった教室は
ガヤガヤと少しうるさかった。

皆、今日が入学式ということもあり
気分が高揚しているのだろう。

しかし彼女が教室に入った瞬間
にわかにその音が止んだ。



それは見馴れない人間に心を驚かせたせいか

あるいは並外れた容姿に見惚れたせいか。



彼女はそんな周囲に見向きもせず
まっすぐ座席表を確認し
指定された席に座った。


止まっていた時が再び流れ出した。

しかし、先ほどの
ガヤガヤとした騒音ではなく
今度はヒソヒソと
声を潜ませているようだった。

こんなに好奇の視線を
浴びていながらも
彼女は全く動じない。

誰も彼女に
話しかけようとしないのは
彼女の冷めた瞳が
関係しているのであろうか。

誰もが彼女を、近寄りがたい、そう感じていた。
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