春を待ってる
確かめてみたり、とか
※ 貴一
美咲の家のリビング、ローテーブルの上にはファミリーサイズのクランチチョコがどさっと置いてある。どんな高価なチョコレートよりも俺はコレが好き。
さすが美咲、俺の好物をよくわかってくれてる。
「ちゃんと付き合ってる子がいるって言ってあるよ」
と言うと、美咲の頰が薄桃色に染まった。
告白したからといって俺たちの関係に大きな変化はなく、幼馴染みには変わりはない。とくに変えようとしなかったのは、学校で周りの奴らに冷やかされるのが嫌だったから。
高校を卒業して大学に行ったら、誰にも冷やかされないところで、ちゃんと美咲と始めたかったんだ。
「美咲が好き、美咲だけが好き」
美咲の肩を抱き寄せて耳元で告げると期待通り、ふわっと耳が赤く染まってく。恥ずかしがって腕を解こうと必死になるところが、いっそう俺を駆り立てる。
「離してってば……」
腕の力を緩めたら、美咲はするりと抜け出して俺を睨んだ。
「俺のこと、好き?」
「な、何言ってんのよ、もう……いいよ」
尋ねると、美咲の頰に引き始めていた赤みが蘇る。ふるふると揺れた瞳を見てたら、俺のスイッチが入るじゃないか。