春を待ってる
まったく、この子たちは
桜の花びらの舞い散る中、駆けていくふたりの背中を見ていたら目頭が熱くなる。置いてけぼりにされたことなんて、どうでもいい。
ふたりが無事に成長してくれたことが何よりも嬉しい。
「あの子たち、とうとう大学まで一緒になったわね」
「中学までは仕方ないとしても、高校まで一緒とは思わなかったし……、まさか大学まで一緒なんてね」
「こうなったら、とことん……だね」
「そうよ、私たちもその方が安心だし」
私たちが笑ってることなんか知らずに、ふたりは腕を組んで歩き出す。ぴたりと肩を寄せ合ってるのを見ていると、何を話してるのか気になってしまう。耳を澄ませても聴こえるわけないんだけど。
「貴一ったら生意気なことしてる」
「だけど安心した、捻くれた美咲を素直にさせてくれるのは貴一君だけよ」
「そんなことないよ、貴一だって……」
私たちは顔を見合わせて笑った。
何にも言わないけど、私たちは知ってるつもり。これまでのふたりのこと、どんな気持ちで居たのか、何を望んでいるのか。
だって母親だもの。
ずっと前から、気がついてたよ。
ふたりはお似合い。
これからも仲良くね。
- 完 -