春を待ってる
突き動かしたのは彼女の意外性。
初めて知った彼女の可愛らしくて女の子らしい一面。
俺の知らないところで、彼女は女の子になっていたんだ。
いや、最初から女の子に変わりはない。
「意外と、可愛いモノ作るんだな」
率直な気持ちを言葉にしたら、きゅっと眉を寄せる。ふるふると震わせる目は恥ずかしそうにも悔しそうにも見えて、直視できなくなってしまうじゃないか。
にらみ合うように見つめていたら、先に目を逸らしたのは彼女。
「意外と……ってどういう意味よ、喧嘩売ってんの?」
つんと言い放って、そっぽを向いてしまった。可愛げのない物の言い方は相変わらずだというのに、尖らせた唇にドキッとさせられてしまう。
もう、どうしようもなくなってくるじゃないか。
なんて思いつつ、彼女を追いかけてきた甲斐があったかも。
「喧嘩売ってるんじゃない、口説いてるんだ」
開き直って言ってみると、彼女の大きな目がますますぱちりと開く。
さて今度はどんな憎まれ口が返ってくるか、と期待して待つこと一瞬。
「バカ……」
彼女の返事は直接、俺の唇に落ちてきた。