甘い果実~妖な君と恋紡ぎ~
今は昔、さくらという娘ありけり。その娘、貧しき家に生まれけり。

その娘、あやしき力もちけり。その力、全てを癒すものならん。

かの娘歌えば花咲き誇り、傷癒えん。

かの娘、16になりぬ。その時、紅き目のをのこ助く。そのをのこ言う。娘が18になりし時我そなたを迎えに来む、と。

娘、18になりけり。ある時、紅き目のをのこ現る。我、そなたを愛す者、我と共に生きてはくれぬか、と。

娘、是と答う。娘、一目会いしとき彼の者の魅力に惹かれつ。

そのをのこ吸血鬼なる者なり。それを、娘知らず。をのこ、娘に打ち明けぬ。我、血を吸う鬼なり。血を吸わねば生きていけぬ。

娘言う。我の血を飲みたまえ。我の血、特別なること、そなたも知っておるであろう。

我の血、命そなたに差し上げよう。
その代わり、我の村お守りくだされ、と。


その後、その村はこれといった災害に見舞われることなく、幸せな暮らしをおくりけり。



これは、この世界にまつわる吸血鬼と人間の娘の物語。誰もが御伽話だと信じて疑わない、話。
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