チョコレート・サプライズ【短】
土曜日でバレンタインという絶好のデート日和のせいで、いつもに増してカップル客が多いカフェの店内。
オープンからお客様が途切れる事は無かったと早番のスタッフが言っていた通り、すっかり陽が暮れた今もスタッフはバタバタと動き回っている。
残念ながらチョコレートをあげる相手がいない、よく言えばフリーを満喫中の私も、漏れなくその中の一人だ。
「バレンタインディナープレートがお二つ、お飲物はコーヒーとミルクティーでよろしいですか?」
目の前で仲睦まじく微笑んで頷いたカップルに、思わずため息が漏れそうになる。
何が悲しくて、誕生日にこんな思いをしなければいけないのだろう。
本来なら、今日は休暇を貰えるようにシフト希望を出していたはず。
それなのに容赦無く出勤させられてしまった事で、私の心の中はどんよりとした曇り空をあっという間に通り越し、嵐が巻き起こっている。
「バレンタインディナー二つ、コーヒーとミルクティーです」
キッチンに戻って取って来たばかりのオーダーを伝えると、スタッフ数名が口々に返事をくれる。
「おい、こら」
くるりと踵を返してホールに戻ろうとしたところで、今一番聞きたくない声とともにその主が目の前に立ちはだかった。
「はい?」
「何なんだ、その顔は?笑顔はどうした?」
「これでも精一杯笑ってますよ」
「誰が見ても仏頂面だよ、お前のそれは」
「店長、視力が悪いんじゃないですか?」
「悪いのはお前の愛想だ」
「すみません。今日はのんびりお休み出来ると思ってたんですけど、横暴な経営者から嫌がらせを受けたせいで気分が悪いもので」
嫌味たっぷりの笑顔を見せると、店長がため息混じりに眉を寄せた。
オープンからお客様が途切れる事は無かったと早番のスタッフが言っていた通り、すっかり陽が暮れた今もスタッフはバタバタと動き回っている。
残念ながらチョコレートをあげる相手がいない、よく言えばフリーを満喫中の私も、漏れなくその中の一人だ。
「バレンタインディナープレートがお二つ、お飲物はコーヒーとミルクティーでよろしいですか?」
目の前で仲睦まじく微笑んで頷いたカップルに、思わずため息が漏れそうになる。
何が悲しくて、誕生日にこんな思いをしなければいけないのだろう。
本来なら、今日は休暇を貰えるようにシフト希望を出していたはず。
それなのに容赦無く出勤させられてしまった事で、私の心の中はどんよりとした曇り空をあっという間に通り越し、嵐が巻き起こっている。
「バレンタインディナー二つ、コーヒーとミルクティーです」
キッチンに戻って取って来たばかりのオーダーを伝えると、スタッフ数名が口々に返事をくれる。
「おい、こら」
くるりと踵を返してホールに戻ろうとしたところで、今一番聞きたくない声とともにその主が目の前に立ちはだかった。
「はい?」
「何なんだ、その顔は?笑顔はどうした?」
「これでも精一杯笑ってますよ」
「誰が見ても仏頂面だよ、お前のそれは」
「店長、視力が悪いんじゃないですか?」
「悪いのはお前の愛想だ」
「すみません。今日はのんびりお休み出来ると思ってたんですけど、横暴な経営者から嫌がらせを受けたせいで気分が悪いもので」
嫌味たっぷりの笑顔を見せると、店長がため息混じりに眉を寄せた。