未来ーサキーの見えない明日までも。
「好きだと思う相手に乱暴したくなった事ある?」


 恥ずかしげもなく訊いて来る奏多。


「奏多、お前…好きな子がいるのか?!」


 ソファーから身を出し、祥多は目を輝かす。奏多は頬を引きつらせ、父を見る。


「知人の話」

「な……んだ、驚かせるなよ。寿命が縮んだ」

「ごめん」

「いや。そうか、お前も中3だもんな。興味もあるだろうし、考えもするだろうな」

「興味ない。誤解だ」

「悪い事じゃないさ。寧ろ、今興味持っとかないと後で少女誘拐とか暴行とかに走るんだぞ」


 里田はまさか、思春期の時に興味を持たなかったから中学生に走ったのか?──などという疑問が頭をよぎる。


「出来るなら息子にこんな答えは返したくないが……あったよ、そう思う事は」


 奏多は軽くショックを受ける。尊敬している父からその言葉は聞きたくなかった。


「多分、男ならそういう欲求は多少あると思う。好きな子相手なら尚更」

「…………」


 ショックを受けている様子の息子に苦笑しながら、優しく声をかける。


「皆が皆そうかと訊かれたら、違うと思う。けど…いつかお前にも分かる時が来ると思う」


 その時が来たとしても、自分を責めたり嫌いになったりするなよ──と祥多は言った。


 奏多は黙って、キッチンに入って行った。















 4月10日、土曜日。

 時枝家三人は花園家を訪れた。


 花園家長男、達樹が三人を出迎える。


「遅い! 5分待った!」

「たっちゃん、ずっと玄関で待ってたの? ごめんね」


 祥花がしゃがんで目線を合わせて謝ると、達樹は顔を真っ赤にして、


「うっせぇブス!」


 と叫んだ。祥花が固まる。

 奏多は鼻で笑い、祥多が頬を引き攣らせ、達樹の頬を力任せに引っ張る。


「達樹、お前誰に向かってブスっつってんだ? えぇ?」

「いひゃいいひゃい!」

「父さん。大人気ない」


 奏多の言葉に祥多は鼻を鳴らし、放してやる。
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