未来ーサキーの見えない明日までも。
「煩いよ、達樹。いらっしゃい、おじさん、サヤ、奏多」


 続いて出て来たのは長女、美月。ショートカットの栗色の髪がよく似合う。


「おはよ、みっちゃん。今日はお招きありがとう!」

「いーえー。さ、上がって」


 美月の言葉に三人は従う。その間、祥多と達樹は睨み合ったままだ。


 リビングに入ると、中は盛大に色鮮やかに飾られていた。


「あ、いらっしゃーい」


 キッチンの方から美月と達樹の母、美香子が顔を出す。


「あ、美香子さん。お邪魔してますー」

「サヤちゃん、ちょっと見ないだけで大人っぽくなったわね。恋でもしてるのかしら」


 ふふっと笑う美香子に、祥多がショックを受けたように祥花を見る。


「サヤ! お前、そんな大事な事はちゃんと父さんに報告しないとダメだろ!」

「俺の時と全然違う反応だな、父さん」

「お前はいいんだ! 嫁に行かないんだから!」


 祥多の言葉に、皆が笑う。


「あら、楽しそうね。アタシも混ぜて」


 ひょっこりと顔を出したのは、主催者である花園直樹。


「あ、なっちゃん!」

「きゃ~っ! サヤ、会いたかったわ~!」


 ひしっと抱き合い、数週間振りの再会に喜ぶ。


 彼、花園直樹は男であるが、女装に女口調。自他ともに認める、俗に言うオカマ。


「もう中3よね! やだ、あの頃のノンノンにそっくり!」


 ノンノンというのは、祥花の母・花音の愛称だ。とは言っても、そう呼ぶのは直樹のみ。


「苦しい苦しい! なっちゃん、苦しいぃー!」

「あははっ!」


 じゃれあう二人を優しく見守る祥多と美香子。笑っている美月。ツンとそっぽ向いている達樹。無表情に見つめる奏多。


 ピンポーンと呼び鈴が鳴る。


「最後のお客様ね」


 美香子が笑いながら最後の客を出迎える。


「いらっしゃい、早河君」

「お招きありがとう、美香子さん」


 早河隆太はにっこりと笑った。
< 23 / 78 >

この作品をシェア

pagetop