未来ーサキーの見えない明日までも。
 彼は有名な作曲家。祥多らの友人。一番仲が良かったのは今は亡き花音だった。

 そして彼は、花音に好意を抱いていた。いや、未だ抱いているせいか独身中。


「おう、早河」

「お久し振りですね、時枝さん」


 恋敵である祥多と挨拶を交わし、祥花に目を向ける。


「サヤちゃん」

「あ、隆兄さん!」

「全然会いに行けなくてごめんなー」

「いや、来なくていいから。ってか手を出すな、手を」


 横槍をさす祥多を無視しながら、早河は祥花を抱き締める。


「お母さんに似て来たな」

「みんなに言われるー」

「よし、来年辺りプロポーズするから心積もりしといてくれよ」

「あはは、しとくしとく」


 祥多がショックを受けた顔をしているのを見て、直樹や美香子、美月が笑う。

 祥花は花音同様、周りから愛される子に育っていた。


「さてさて皆さん、始めましょうか!」


 直樹の一声で皆が集まり、ジュースを準備する。

 テーブルには既に準備された料理の数々。


「あ、美香子さん、これ差し入れ」


 早河が白い箱を美香子に差し出した。中には、たくさんのシュークリーム。


「ありがとう、早河君」


 美香子がキッチンに行こうとするところを、奏多が引き止める。


「これも」

「良い香りー。プリンね? ありがとう、奏多君」


 ぺこっと会釈し、奏多は戻る。そんな奏多の後ろ姿を見つめながら美香子は思う。


(サヤちゃんが花音ちゃんに似て来たように、奏多君も祥多君に似て来たわ)


 小さく笑いながら、美香子はキッチンに入って行った。















 わいわいと食事を終えた一行は、町内で一番綺麗に桜が見られる桜木公園へ足を伸ばした。

 ちょうど桜は満開で、花見をしている人も多い。


 直樹主催のお花見パーティーは、午前は和気藹々と食事、午後は桜木公園で桜を見るというものだ。


「わぁ~。綺麗ねぇ」

「ねぇー」


 美月と祥花がくるくる回りながら桜を見上げる姿に、直樹はシャッターを切る。彼はプロのカメラマンだ。
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