未来ーサキーの見えない明日までも。
「ふふ。良い顔して笑ってるわー、あの子達」


 カシャカシャとシャッターを切る横で、美香子は呆れて苦笑い。


「ほらほら、達樹も奏多もあっち行ったー! 思い出よ、写って写って!」


 直樹が無理やり奏多と達樹を前方へ押し遣った。

 達樹は真っ赤になって怒りながら直樹に食ってかかる。奏多は何事もなかったかのように歩き続ける。


「やーん! 超可愛いわよー! 達樹ぃ、もっと怒っちゃって」

「オカマ! 変態!」

「やぁね、オカマは認めるけど変態じゃないわよ」


 妙に対抗しながら、いろんな角度から達樹や美月達を撮っていく。

 その後ろを、祥多や美香子や早河が歩く。


「変わんねぇよな、直の奴」

「ええ。特に今日は年に一度のお花見パーティーだから」


 直樹は昔から、こういうパーティーなどが大好きだった。一番張り切って楽しんでいた。


「早河君は?」

「はい?」

「彼女とかいないの? 結婚の予定とか」

「全然」


 あまりにもきっぱり言う早河に、祥多は冷や汗をかく。


「まさかお前、本気でサヤを…?!」

「ハイ。サヤちゃんが大人になるのを待ってます」

「渡さん! サヤは絶対に嫁に行かさんからな!」

「ふふ、祥多君は典型的な親バカね」


 美香子が笑う。


 サァァッと風が吹き抜ける。桜の匂いが、鼻をつく。


「…比較しちゃうんですよね。草薙と」


 早河は寂しそうに笑い、桜を見上げる。


「無意識に草薙と比べて、あぁダメだって――それの繰り返しですよ」

「早河……」

「凄い奴だなって改めて思いますよ。こんなにも俺の中に居座るなんて」

「…そうだな…」

「そんな凄い奴を射止めた時枝さんも凄いんですけどね」


 冗談っぽく言いながら、早河は笑う。


「大丈夫ですよ、俺は。そんなに雍じゃないです」


 その言葉を聞いた祥多と美香子は安心した。前を向いているようだから、その内きっと良い出逢いがあるはずだ。
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